メダムK (その3)

2011.10.13 Thursday

 


(→つづき)


まず私にとっての娼婦像の大部分は、読んできた小説や見てきた映画から出来ている。そこでの彼女達は出番こそ少ないけど、股で俗世を読み取っているがごとく達観していて、どっしりと頼もしい。例によって生きることに迷い悩んでいる主人公たちは、彼女達や彼女達を取り囲む環境に触れ、何かを学び取り、地べたを這うようにほんの少し前進する。物語のなかで語られる、そういった彼女達の役割を、“癒し”で片付けてしまうには、あまりにも平べったくて味気ない。かといって適当な言葉がまだ見つかっていないのも事実。引き続き探してみるけどね。今は“やわらかい影”って言葉を使って説明したりしてるんだけど。悪くないよね。「高架下の陰に潜む、やわらかい影」


言っておきたいのは、いま話した娼婦像はあくまでもフィクションの世界から取り出してきたソースで、それがそのまま黄金町にも当てはまるとは思ってないし、リサーチして証明しようとも思わない。娼婦という職業を俯瞰して見ようとしたときに、想像し得る、ひとつのちいさな側面。その側面を拡大解釈しようと思ったってこと。


 


あと、パリのとなりモントイユに住んでた頃、何度か中国系娼婦に間違えられた。そのとき感じた、この職業の日常性。フランス人の友人が言うには、彼女達はノーメイクにTシャツ、ジーンズ、サンダル、長い髪をひとつにしばって、街を歩き回りながら客を引きするのが常らしい。私まったく同じ格好してた。


メトロの中やお店の中で値段を聞かれたときは、相手の表情や言葉が迫ってくるようで、すごく怖かった。でもそれより怖いのは自分の?気さ。だって、それがある種の交渉だと解るまで「あれ?ワシ、ナンパされてるのん?」とか思っちゃってるんだから。世界基準わかってないって、怖いよ。


 


最後にもうひとつ。昔、海外で各国の風俗を回っているっていう人に会った。その人が彼女達との行為を「深い森」とか「海での素潜り」に喩えてたの。実はこの言葉、前からずっとひっかかってて、たまに思い出すんだよね。だから模型の段階から、それも盛り込んじゃった。いま、展示されている現物の「メダムK」もこれから11月6日の展示終了に向けて、大自然へ昇華させてやろうって企んでる。


「夜の空」に。


 


(つづく→)


 


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球とは超多面体なのか、超多点体なのか。    どうでもいいか。寝てしまえ。