グレースケール

2011.10.25 Tuesday

 


晴れた日には「・・・せねば」とプレッシャーを感じるし、雨がふれば予定変更をせまられ鬱陶しいし、それを予感させる厚い曇天もしかり。


グレースケールBK8前後の曇りの日が、実はいちばん好きなのかもしれません。


はしゃがず、憂えず、なんでもない日。顔文字で言うと (・_・) ですかね。


 


そういった日に散歩していると、堀江敏幸さんの『郊外へ』を携帯し、RER(高速郊外鉄道)を乗り継ぎ、パリ郊外のcentre d’art(アートセンター)を訪ねるという口実で、終日ぶらぶらしていた日々を思い出します。車内の臭い、壊された改札、誰もいない展覧会、もうバゲットしか作らないパン屋。


と、曇り空。


一日中、何時だかわからないような薄曇りの日には、何処にいるのかもわからなくなりがちです。


 


当時の私にとっての堀江作品(とくに『郊外へ』『子午線を求めて』)は、「現実と妄想とが偶然に繋がり、時代や空間がねじれ、いつのまにか奇妙な場所に“ぽつん”と立っている自分」に会える本。


長めのセンテンスが作る独特のリズムは、まったりと気分を落ち着かせ、まさしく私好みの薄曇りに似ており、そんな空の下、自分のことを知る人が誰一人いない街をさまよう自分の姿が、文中に何度も浮かんでは消えてゆくのです。(←僭越ながら長めセンテンスをマネてみました)


そして引用されるたくさんのフランス文学、作家、映画、美術、歴史、etc. はフランスへの興味を放射状にぐいぐい広げてくれます。それら引用をたどる楽しさは数年経った今でも色褪せることなく、私の読書計画に影響を与え続けています。


 


ただ今、世間的には旅行の季節らしく「パリに行ったらどこにいけばいい?」と、よく聞かれますが、まずはフランス知的地図として堀江作品の携帯をお薦めしたいと思います。


 


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