メダムK (その1)

2011.10.09 Sunday

 


黄金町バザールに展示中の作品「メダムK」。


7月の中旬から8月の下旬まで黄金スタジオで制作し、6つのパーツをバラバラのまま高架下へ運び、今の展示場所で合体させました。


 


制作初日、真っ黒いビニールに包まれた大量の材料(ウレタン)を見て、少々冷や汗がでました。


巨人の棺桶みたいで不気味だったし、「これでもう、無かったことにできなくなっちゃった…」という焦り。


積み重なった“棺桶”が視界から消えるまでの2週間は感情を殺し、能面のようなというか、「こはち君」のような顔で作業を進めていました。


なので、記憶がございません。


 


立体制作は行程がはっきり分かれている場合が多く、ひとつの行程をただひたすらこなします。手順について考えたり悩んだりするのは、制作に入る前とそれぞれの行程のあいだです。


迷い始めると手が止まるし、ひとつの行程をやりきらないと、その手順の善し悪しが判断できないからです。


逆に全体像がぼんやりとでも見え始めれば、早く完成が見たい!と、手が早く動くようになります。


同時に私の表情は明るくなり、愛想も良くなります。えっへへー。


 


エアコンあり、日差しあり、照明あり、おまけに『試聴室その2』のライブまで聞こえる黄金スタジオ。


そこから蚊がいて、暑くて、陽が暮れたら作業終了の高架下へ。


メダムKの脇の下や脚の付け根の縫いは、身体ごとボア生地に挟まれなければならず、流れる汗に両者ドロドロ状態となりました。


けれどそんなドロ臭い二人にも、あの瞬間がやってきます。


 


作品の周りの空気が、音もなく大きく変わる瞬間。


残念ながら、これは私しか見ることができません。


私はいつも、その瞬間から完成までの時間を『○○との蜜月』(○は各作品名)と呼んでいます。


 


こうして46日間の制作を終え、私は針と糸を置いたのでした。(百恵ちゃん風に)


 


だってまだそのときは、この後メンテナンスのためにさらに縫い続けるとになるとは思っていませんでしたからね。


 


 


 


 


メダムKの半分は血(カッターで切って)と、汗と、よだれ(昼寝して)で出来ています。


ピンポーン。