『ダブリン、ブルックリン』
2013.03.31 Sunday
『パリ、テキサス』とは関係ない。
2006年に展覧会のためにアイルランド、ダブリンに行った。
空いた時間に、トリニティカレッジ近くの書店「Books Upstair」のバーゲンで手にしたのが
『The Brooklyn Follies』Paul Auster。
レジで店員の小柄なおじさんが「これはとてもいい本だよ。」と、笑顔でおつりをくれたことをよく覚えている。
でも途中で英語を読み続けることに挫折、そのまま放ったらかしてしまった。
原書の出版から7年経った去年翻訳され、今年やっと手に入れたのだ。(万歳!)
訳者はもちろん、オースターから「moto」と呼ばれている柴田元幸さん。
(ちなみに柴田さんはオースターの7歳年下。「ほとんどの作品が原書出版の7年後に翻訳出版。オースターが書いた年齢と同じ年齢で訳しているんです。」と感慨ぶかげにおっしゃってました。@トークショー)
内容はタイトル通り、ブルックリンでのやっちまった(愚行)話。
オースターの作品では一番軽快な語り口かも。
おそらく目をつぶってでも、ブルックリンを歩けるだろうオースターが、“ 我が愛しき街 ” を語っている作品でもある。
日々、少しずつ知り合い少しずつ親しくなってゆく登場人物たち。
それぞれの平凡な毎日に、それぞれの困難や危険が現れる。
彼らは曖昧さと抽象性をもってその困難と対峙する。
それは逃げではなく、現実を正面から受け止めながら、毎日を生き続けるために身につけた技能。
人生での数々の危機と困難は時間を経て、ユーモアと親切を以て「愚」へと変換され語られる。
日々私たちは、この作業を淡々と繰り返し、自分の周囲に積み上げてる。
決定的な何かから回避するために。
互いのために。
可能な限りは。 なんだけど。
ということに、あたらめて気付かせてくれた。
私の場合、ところどころダブリンの街並になってしまったけど。
それもまた良し。
『パリ、津田沼』は会田さん。