海のむこうの箱男
2012.12.29 Saturday
今日、12月29日はジョセフ・コーネルの命日だということをこの本で知った。
『ジョセフ・コーネル 箱の中のユートピア』(デボラ・ソロモン著/白水社)
小説家の伝記はいくつか読んできたけど、美術作家の伝記らしい伝記を読んだのはたぶん初めて。
著名な美術作家の伝記とは
「奇抜で豪傑な武勇伝が声高に語られ、その不摂生の果てにひどく身体や精神を壊し早死する話。」という勝手なイメージを持ち、敬遠していたところがある。
でも本当はずっと覗いてみたい世界だったのかも、とこの本を読んで思った。
彼らの精神の在り方、心の拠り所を知れるなら、もっと読みたい。と。コーネルはメモ魔で、収集魔で、保存魔だった。
この本には30年以上に及ぶメモのような膨大な日記と、彼が宛てた手紙から、数多くの言葉が短く、細かく登場する。
それはピンと張られた糸のように、終始著者の語りの真ん中にあって、全体を安定させている。感動、愛情、友情、妬み、恨み、絶望、性欲 etc...
どんな場面でも引用されたコーネルの言葉には体温が感じられ、親近感を持ってしまう。
武勇伝を生むだろう喧噪とは遠く離れた場所での制作を死守するように、引きこもって生きていたコーネル。
残された作品と言葉と著者が、力を合わせてその遺志を継いでいるように感じた。ジャンル的に「これから読んでみようと思ってんのに」、「今読んでいるのに」という方がいそうなのでこのへんで。
??同じ時間 同じ場所に 無数の “本当の話” アリ