メダムK (その4)

2011.10.17 Monday

 


(→つづき)


そんなことを思い浮かべながら制作に入った。


自分が勝手に溜め込んだ妄想をカタチにしただけだとしても、やっぱり黄金町ではデリケートな口調になってしまう。「過去を賞賛しているんじゃ?」と勘違いされたりもする。仕方がない。でも私のほうも、いつも本気で「わからない」し、「迷って」いるし、ひとつも結論持ちあわせない作家としてやってきたのだから仕方がない。できる事があるとすれば、妄想の力を借りて物事の見方や考え方、迷い方のバージョンをひとつ増やすことぐらい。(...つっても簡単なことじゃないけど)


デリケートなテーマなら、面倒くさがらずデリケートに持ち運び続ければいいわけで。


 


マッシブであること、すべて手縫いであること、触れる・乗れる仕様であること。そこらへんにこだわったのも、本気モードのあらわれ。「か〜わ〜い〜?」と一蹴されないようなサイズにする。というのも重要だった。そうやってだんだん具体的な要素が出始めてくるときって、すごく楽しいんだよね。明け方、車道を自転車で飛ばしてるときみたいだよ。


大モノを作るときは必ず「触れられる」ことを考える。だって、自分が触りたいし、抱きつきたいから。自分が触りたいものを作って「うわぁ、やっぱいいわぁ」と自画自賛して、次に他の人にも触ってもらって「どう?いいでしょう?」とニヤニヤする。そう、自慢。


「触れる」って行為は、全ての人に公平な気がする。なんだか広々してる感じがいいじゃん。


 


ここまで書いてはみたものの、作家の言葉なんて完全に飛び越えちゃう作品でなければならないの。ぱーん!と。


私の意図しないところで、見た人それぞれの体内で何かが新しく始まったらいい。勘違いも、思い過ごしも、それが圧倒的ならいいよね。


いずれ作家の言葉は消えて、身体も消えて、作品だけが残る。   はずだから。


 


どうでもいいけど、はやく見にきなさい。


 


おやすみ〜。



 



 


(おわり)


  IMGP4302


 


 


入り口広く、出口は狭く。     ...出口があったらの話だぜ。